| 元気凛凛 日本の小出版 |
| 渡辺美知子 柘植書房 ISBN 4-8068-0312-X C0030 P1854E |
![]() ところで、茨城県は文化度が低い。いや、県全部を知っているわけじゃないから、県南部は、とでも言っておこう。ここでいう文化度は、「本屋の品揃えの良さ」という意味がほとんどである。私のうちのまわりの本屋には、本当にろくな本がありゃしないのだ。 そういう本屋では、中堅どころの出版社はおろか、この本で取り上げられているような「小出版社」の本を見かけることはきわめて少ない。残念無念。 だから、いざ「面白い本を買うぞ」というときには、都内に「本の買い出し」に行かねばならない。屈辱である。ちょっと前の話だが、それで三省堂の本店に行ったら、たまたま「社員三人以下の出版社の本」フェアというのをやっていて、いたく感動したことがある。小出版社だからいいってわけじゃないが、そこに並べられている本は、どれもリキが入ったいい本だったのだ。3冊ほど買っていった記憶がある。 副題の「堂々の28人に聞く2420分」を見てもわかるとおり、これは、そういう「小出版」にかかわる人たちのインタビュー集である。想像がつくと思うが、小出版社の経営は楽なんてものじゃない。毎年100社の「小」出版社が誕生するが、1年たって残っているのは1割程度という。荊の道である。しかしそれでも、借金を抱えて自転車操業をしながらも、「出したい」と思う本を出しつづけるところがたくさんあるのだ。そういうのはむちゃくちゃかっこいいぞ。 出版「現場」の空気は、本好きにとってはすごく面白い。「小さな出版社の気概のある本」に触れたことのある人にはおすすめです。ブックガイドにもなります(笑)。 |
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1997.11.15. Grade [ B ] |
| 山原バンバン |
| 大城ゆか ボーダーインク \1200E |
![]() 『漫画の時間』(いしかわじゅん)に紹介されていたので取り寄せてみた。 沖縄・山原(ヤンバラと読む)女子高生、夏美の日常を描いたマンガだ。絵柄が特徴的で、かわいい。 著者紹介の「独自の絵柄とほのぼのした雰囲気、山原にどことなくこだわる姿勢が注目を集めていた」というのからもわかるとおりで、大城ゆかの「地域性」は、過剰ではなく、「どことなく」なこだわりだ。 沖縄にかぎらず地域性というのは、(民族性と同じで、)こだわろうとすればいくらだってこだわれてしまうもので、ややもするとそれが「過剰な地域性」(地元臭さ)となって鼻についたりするんだけれど、「どことなく」で肩の力の抜けたこだわりには、とても好感する。 あー、こういう高校生活っていうのも面白いかもなあなんて、ただ思わせるくらいの力の抜け具合が、ほやほやした絵柄と相俟って、「なんかいいねえ」なマンガになってるのがとてもいい。 セリフの中はぜんぶ地元の言葉で書かれてるので、随所で「?」が飛んだりするんだけど、その「わからんなぁ」という感覚すらも楽しめてしまうのは、ほとんど書き手の人徳というものかもしれないです。 注文しないで入手することは絶望的だけど、注文すれば確実に届く一冊。 買ってみるのも面白いかもしれない。 |
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1997.11.14. Grade [ B ] |
| NEURO |
| 及川俊 TOKYO NECRO SERVE (千葉大祭・文藝部にて無料配布) |
![]() ストイックであるということは怠惰であるということに、実は等しい。 むかし発明したフレーズを思い出す。好感できる詩、というものがあるとすれば、いろんな意味でかっこいい言葉のヤツだ。かっこよさ、というのは、当然だけど非常な努力がともなう。努力というのは空振りもするし、だいたいその方が多いというようなものだが、当たるときは芯を捉えたりもする。ただそのままに「こういう気持ちなんです」を直接に提出できる衒いのなさは、詩作においてはほとんど犯罪的に怠惰だ。(私はそれを犯罪と断じるくらいには、詩というものに敬意を払っている) 直裁の言葉と、彩りを添えるだけの写真、に見えてしまうのは、かつて及川俊が「大渦巻」でみせたすさまじい奔放を体験しているからかもしれない。製本やデザインの中途半端さにあるのかもしれない。中途半端に、奔放なのだ。抑制と開放の中間地点にあるこのページの数と詩と写真の量は、焦点をぴんと合わせる感慨もないかわりに、その世界に引きずり込むほどの力もない。 と、感じた。(もしかするとこれは、ただ、写真がいまひとつな物が多すぎる、というだけなのかもしれない) ただ、 「どんなにいい思い出を残しても/どんなにいい思い出を残したとしても」 このフレーズのページは、好きだな。 フレーズ単体ではなくて、ページがね。 そろそろ、マキハラ的な心情吐露からは脱却するのもひとつの道では? というのだけ、最後に書いておいてみる。ねえ。 |
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1997.11.13. Grade [ C+ ] |
| 親指Pの修行時代 上 |
| 松浦理英子 河出書房新社 ISBN 4-309-00867-4 C0093 P1500E |
![]() 松浦理英子の作品はこれまでにもいくつか読んだことがあるが、これほど面白くはなかった。松浦理英子のそれまでの作品は、多かれすくなかれ「男性中心の文学」に自覚的だが、その意識がいささか過剰だった。だからそのセンシティヴさは、先鋭的でぴりりとしていても、腑に落ちる「面白さ」からは、すこし、遠かった。 「親指P」が売れたのも、もちろん「親指にペニスを持つ(ことになってしまった)女性」というエキセントリックなテーマもさることながら、読んで単純に「面白い」というのもあるんだな、と今では思う。(売れていた当時、私はその売れっぷりに反発していたのだ) いや、もちろんこの多様で個性の強い、魅力的なキャラクターたちの織り成す物語が面白い、というのには、いろいろな意味での「性」が絡んでいるからだ。それについては、ほかの彼女の作品と同じだ。でも「親指P」が「売れるほどわかりやすい」というのには、主人公=親指Pの持ち主である真野一実の「にぶさ」がある。ニュートラルな鈍さ、あるいは、読者に近しいにぶさ、といってもいい。狂言回しがまわしすぎない程度に、でもきっちりなすべきところはまわしている様子には、やはり、物語的な面白さがあるのだ。 (思えばこれは、推理小説において探偵がクライマックスの推理シーンまではほとんど役に立たないのに似ている) これから下巻を読みます。今のところ、おすすめです。 |
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1997.11.13. Grade [ A- ] |
| ■RANさんの『親指Pの修行時代』(評論) |
| 巨人軍の政治学 |
| 谷崎晃 三一書房 ISBN 4-380-97273-9 C0075 \1600E |
![]() まず最初に断っておくべきは、私が巨人ファンはおろか、プロ野球そのものにほとんど興味がない人間だ、ということだろう。でも、日本人男子の必然として、野球のルールやらセパ両リーグの球団構成ぐらいは大体のところを知ってはいるし、その年の優勝チームや日本シリーズの決着などもぼんやりと知っていたりする。(日本人男子というものはそういうものである。と思う) これは、オビにあるとおり「巨人の組織論、人間関係論」からプロ野球界に特異な存在としてある「巨人軍」を考察して遊んでみよう、というような本だ。巨人が特異なのは言うまでもないことだろう。なんせやつら、「軍」なのだ。「軍」だよ、「軍」。特異である。 「人脈」から組織を分析していく手法は、前著の『君島家の人びと』でも行われていたが、さすがに相手が「巨人」となると量が膨大である(よく調べてあって驚く)。濃密な人間関係の集積をつらつら読んでいてもトータルな「巨人」のイメージは私には湧かなかったけれど、ドラマの筋書きを凝縮して、それをずらっと並べられたような読み味が面白い。野球に格別の興味や知識がなくとも読めるのは、そこにあるのが複雑で錯綜した「ドラマ」だからで、それを整理して提出してくれてるからなんだろうな。 (しかし、これだけの人脈や事件や試合のデータを調査し分析しまとめあげる手腕はホントにすごい。博覧強記である、という以上に「野球、好きなんだろうなあ」と思わせる、好感すべき「濃さ」なのがいいのだ) 野球好きの方は、巨人ファンやアンチ巨人ファンを問わずにおすすめです。買いです。注文しましょう、是非。 |
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1997.11.12. Grade [ B+ ] |
| コミックマスターJ 1 |
| 余湖裕輝・作画 田畑由秋・脚本 少年画報社ヤングキングコミックス ISBN 4-7859-1807-1 C9979 \495E |
![]() バカ過ぎ(笑)。 「TRIGUN MAXIMUM」のために「ヤングキングアワーズ」を読んでいて発見した、伝説のアシスタント・Jの物語だ!(笑) ブラックジャックのマンガアシスタント版というか、合言葉は「仕事料は500万だ!」だし、随所にパロディは盛り込まれているわですげえ変だ(笑)。 マイナー誌の連載ゆえにコミックスを見かけることは少ないが、お好きな人は是非どうぞ(笑)。 |
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1997.11.9. Grade [ B+ ] |