中央研究室にいま、教官たちのてんでに話す声とタバコの煙とが同じ濃度で充満していると仮定しよう。そう無理な仮定でもあるまい。中央研究室というからには、さしずめ研究科主任である安蛭(あんびる)武雄教授の研究室の通称であり、他の研究室のさしあたり一・五倍ほど広く、主任の他に常に事務助手と秘書が一人ずつ詰めていてパソコンを扱っているというほどの事実も付け加えられてほしい。中央研究室という唐突な専門用語に対する警戒心もこれで氷解しただろうか。玄城大学三号館七階の全フロアを占める「総合文化哲学科」の指令塔、管制塔と表現しておけば大過ないというわけなのだが。
かくしていま、科会、つまり研究科会議が開かれているという成行きだ。「エクリチュール元年」(三浦俊彦)