2010年09月01日
『宵山万華鏡』(森見 登美彦)
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京都の祗園祭の前日に行われる祭りのことを「宵山」というのだという。熱狂する「宵山」の街に迷い込んだ人たちの、幻想譚でもあり、怪異譚でもあり、また単純に「人を食った話」でもある、連作短編集。
宵山に迷い込み、赤い浴衣の不思議な少女たちとかかわりあうこととなった姉妹を、妹(「宵山姉妹」)と姉(「宵山万華鏡」)、それぞれの視点から描く。あるいはまた、はじめて宵山にきた青年が、友人に一杯喰わせられた話(「宵山金魚」)と、そのための大掛かりな舞台裏の話(「宵山劇場」)。七つの頃、宵山で消えた娘をいまでも追っている画家の叔父と、その従姉妹の女性の話(「宵山回廊」)と、骨董品屋から宵山で死んだ父の遺品を手渡せと執拗に迫られる画商と、画家と、その姪の話(「宵山迷宮」)。
同じモチーフ、同じ登場人物、同じ「宵山」が、繰り返しながら、さまざまな角度で立ち現れてくる。虚実が入り交じり、さながら、万華鏡のように。
「宵山姉妹」「宵山万華鏡」は、「きつねのはなし」のような怪異譚の成分が多く、一方では「宵山金魚」「宵山劇場」は、「四畳半神話大系」のような、「壮大な馬鹿話」だ。ここでの乙川はまるで小津のような悪戯好きの小悪魔に見える。「四畳半神話大系」といえば平行世界的な物語の繰り返しがまた特徴でもあるけれど、『宵山万華鏡』において、「繰り返される宵山の日」がモチーフになっているのが「宵山回廊」と「宵山迷宮」だ。この二作は、宵山という祭りの場にあっても、むしろ静謐を感じる物語に仕上がっている。
個人的には「太陽の塔」「四畳半神話大系」のラインが好きすぎる──のではあるけど、これはこれで楽しめる一冊ではありました。
B+
2010年08月27日
『弟の家には本棚がない―吉野朔実劇場』(吉野 朔実)
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吉野朔実の「本棚」本……の何冊目だろ。たぶん再読。
たまにぱらぱらめくるのにいいよな。知っている本、知っている書き手が、半分ぐらい出てくるぐらいが個人的にはよいバランス。まあ、これはシンパシーと新味がそれぞれ適度に必要だよねというようなことだけどさ。
「面白いけど内容を覚えてない本」とか、まさに「あるある」だよなあ、と思ったことでした。
どこまでも本好き用。
B+
2010年08月26日
『梅原猛、日本仏教をゆく』(梅原 猛)
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週刊朝日百科「仏教を歩く」での連載をまとめたもの。聖徳太子から宮沢賢治まで、日本仏教成立に関わった人々を(ほとんどは仏僧だが)分かりやすくまとめて紹介している。読みやすくて、面白い。
日本史の教科書で習うようなことが多い、とはいえ、やはり知らない・忘れていることも多くあって、仏教がどのように伝来し、あるいは再発明されてきたのか(法然の口称念仏や親鸞の悪人正機説とか)をざっと概観できるのは非常に有り難い。
孫引きになるけど、一遍上人語録の詩片をメモとして。
心無所縁 随日暮止
身無所住 随夜明去
忍辱衣厚 不痛杖木瓦石
慈悲室深 不聞罵詈誹謗
信口三昧 市中是道場
随声見仏 息精即念珠
夜々待仏来迎 朝々喜最後近
任三業於天運 護四儀於菩提
(p91)
禅宗は、所作を厳しく規定することで生活そのものを禅/修行としたけれど、浄土宗も「市中を道場とする」ところは同根なんだよな、というところに気づくなど。同じ仏教なんだからそりゃそうなんだけどさ。
いい一冊と思います。
B+
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