『モダンタイムス』(伊坂 幸太郎)
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ようやく積ん読消化。週刊マンガ雑誌「モーニング」に56回にわたって連載されたもの。(読んだのは花沢健吾の挿絵を全て収録した特別版)
ネタばらしをしないで説明すれば、これは「システムエンジニアが正体不明のシステムに翻弄され、一矢報いる話」だ。謎の多くは明示的には明かされない(結局奥さんの職業とか過去って何なんだろう……とか)。気弱な後輩と、頼りがいがあるが失踪してしまう先輩、やけに(というか異常に)暴力的な妻の知り合い、そして作家の井坂好太郎。
軽妙な会話と場面場面の牽引力はさすが。「正体不明の暴力的なやつら」の出現は、どこか舞城を思わせるものもあったり。しかし、大きな物語を、ちゃんと地に足の付いた、小さな物語によって回収する(あるいは放棄する)、というところは、伊坂だなあという感じ。「大きなシステム」に知恵と勇気で立ち向かって行く、というモチーフは、伊坂作品には繰り返しあるものだ。
『モダンタイムス』においては、その「大きなシステム」が、表題に象徴されるような、「個人の気持ちや能力でどうこうできるようなもの」ではない、一種正体不明の、それ自体に慣性のついた(つまり自律的な)「仕組み」として描かれるのは特徴的だけれど。特定の「黒幕」はいない。「悪いやつ」はもちろんいるけど、彼らもまた、その役割を演じているだけだ。
その流れに飲み込まれているかぎり、この世界はディストピアだ、とも言えるだろう。その流れに飲み込まれているかぎりは。
面白い作品と思います。一気に、楽しんで読み終えられました。
挿絵も楽しみたい人は是非特別版を。
B++





