2010年01月23日

『ビッチマグネット』(舞城王太郎)

ビッチマグネットビッチマグネット

新潮社 2009-11-27
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舞城王太郎、待望の新刊にして、芥川賞落選作。まあ買ったのは芥川賞の候補になったと知る前だったし(どのみち舞城なら買うのだが)読んだのは芥川賞の選に漏れたと知ってからだったけれど、そういった外部要因はあまり関係なく面白い。
主人公は女の子。香緒里ちゃん。中学生から始まって、弟の友徳と一緒にいろいろ話したり考えたり殴ったりしながら成長していく。しょっぱなから父親は不倫相手のもとに逃げちゃって家にはいなくて、香緒里はそれで怒りを溜めたりしているけど、それはそれとして日常は過ぎ身体は成長し中学生は高校生になって大学生になって、恋も知らず人を好きになることが自分が出来るとも信じられなかった彼女も男の子と付き合ってみて、それで「ああ自分なりに彼氏のことも好きなんだな」と驚きながら実感したりする。二人で夏祭りに出かけていって父親に遭遇したりもする。いろいろある。

タイトルになっている「ビッチマグネット」というのは弟の友徳のこと。友徳はビッチ美人(元?)彼女の三輪あかりちゃんとごたごたとあって、札束が乱れ飛んだりもする。本当は乱れ飛ぶまではない。でも学生にしては大きな金額が動いて、しかしその本質は心理的操作としての「お金のやりとり」だったりする。今回の物語では殺人も暴力も出てこないけれど、三輪あかりちゃんのそういうような人間関係の作り方は非常に「暴力的」だ。舞城はそういう風に暴力を描く、という点では変わらず舞城らしいなぁ。もちろん「家族愛」みたいなものもちゃんとある。舞城らしく。

「ああ……正論ね。正論って駄目だよね。人の怒りとかコンロの火みたいには消えないから、うまく騙して振り回して風に当ててやって、ゆっくり鎮火させないと駄目なんだよね。テクニックが必要なんだよ。正論って一発勝負で、そんなのカッときてる人には効かないし、そうなるとその正論繰り返すことになるから同じ台詞言わされて聞かされて、何で判んないんだよ何言ってんだよって結局お互いイライラし始めて感情的にぶつからざるを得なくなるよね」
「え。……凄いですね、お姉さん。本当ですよね!」(p65)

第八章で大学生になった香緒里が友徳の元彼女と話す一節。言いたいことばーって言い過ぎだけど舞城だよなあ。こういうテンションの子が描けるのは。

恋愛なんてこれで成立すると本人が思う形で成立するのだ。(p198)

ほとんど警句のように隙がない。そうだよ。

チャーミングでクールで速度があって、ちゃんと未来に希望がある話になっていて、それを、明確な暴力や殺人や謎といったこれまでの舞城が使ってきた舞台装置を使わないで描いているのがすごいしうまい。俺は好きだな。読んでいてパワーが出てくる。大作じゃないしウルトラ名作ってわけじゃないけど、小説の力というものを感じられる一冊。読まれるべき。おすすめ。

(でもみんな「ディスコ探偵水曜日」も絶対に読むべき!!すごすぎるから!)

A-

投稿者 Masatoku : 2010年01月23日 22:27 このエントリーを含むはてなブックマーク

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