2009年09月30日
『全滅脳フューチャー!!!』(海猫沢めろん)
![]() | 全滅脳フューチャー!!! (本人本 7) Chim↑Pom 太田出版 2009-09-17 売り上げランキング : 2886 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
海猫沢めろんの新刊、というだけで世界の一部の人には「買え!」と言っていいのだと思う。
「本人」に連載されていたものに加筆修正した、「海猫沢めろん」の自伝的小説。
十八歳のオタク趣味の(しかし、オタク的なコミュニケーションを取るわけではない)「ぼく」が、ホストになり、チンピラになり、それと同時にセーラームーンRを観たり、「スレイヤーズ!」と哲学書を同時並行で読んだりする。 (全体の物語はともかく、そのディティールは著者本人から聞いたことのある部分が多すぎる。──しかし、ここまで書いちゃって、後は何を書くんだ?)「全滅脳フューチャー!!」の主人公には趣味はあるけれど、自我はない。明日のことは想像できるけれど、来年のことは想像できない。趣味の範囲内には生きる実感があるけれど、その壁を越えた地点には世界がない。
(弟以外の家族の発言は、この小説では薄いグレーで表現される。それらは虫の鳴き声や電車の通り過ぎる音のように存在はして、でもほとんど意識されず意味を持たない)
主人公──「ぼく」──は、低質な世界と人々と暴力と物語の中で、ただ生きる。かれにルサンチマンが溜まらないのが不思議といえば不思議だけれど、その場その場で、最悪のことにならない程度にうまく立ち回ることはできるし、するのだ。その連鎖の末に、「この」物語は一つの結末を迎える。そこで彼は、不可思議な光景を目にすることになる。
人間が生きるということは、「外部」とかかわりあうということだ。だからこれは、ホストとヤクザとオタク生活の混沌の中で、彼が「生きる」ということに辿り着くまでの物語なのかもしれない。
彼にしか書けない物語だと思います。
A-
■books can be related to this entry
コメント
コメントする





